ニュースレター(HTML)

ニュースレター第45号(HTML版)2023年12月1日発行

本ページでは、ニュースレターの文字情報だけを掲載しております。
また、ニュースレターに掲載されているイベント情報は、本サイトの最新情報からご確認ください。

Be Social

私たちが暮らす地域や社会の事を他人事ではなく自分事にする。
そういった“ソーシャルな生き方”の魅力をお伝えします。

第30回 髙木 浩平さん
「生きる希望をつなぐピアサポート」

社会の中で共に生きる会
「あゆみ」代表
うつ病など「生きづらさ」を感じている人の居場所づくりとして2018年に団体を発足。
2022年より、(社福)精神障害者社会復帰促進協会で相談員として働く。
吹田市社会福祉審議会で分科会の市民委員も務める。

安心できる居場所

以前、働いていた際に、過労による影響で精神的な不調を抱えてしまいました。
休職と復職を繰り返す中で、何かできることはないかと思ったのが「あゆみ」を始めたきっかけです。
お互いの近況や悩みなど、ざっくばらんに話し合っていて、私にとっても大切な居場所になっています。

再出発のチカラ

同じような境遇の方と対話する中で、当事者だからこそ、理解し合えることがあると感じています。
この経験を活かせればと思い、精神保健福祉士の国家資格を取り、新しい仕事に就くこともできました。
治療や社会復帰プログラムの効果もありますが、私が再出発できたのは、この活動を続けてきたおかげだと思います。

当事者同士で支え合う

当事者同士で支え合うことをピアサポートと呼びますが、共感や傾聴を大切にすることで、悩みを抱える人に「生きる希望」を持ってもらえたらと願います。
また、私たちのような活動が地域の中で増えていくためにも、ピアサポートの重要性を広めていきたいです。

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ここに注目!ラコルタの特集
文化芸術がもたらす社会的価値とは

文化芸術に関する活動というと、趣味や習い事など個人の楽しみと捉えられるかもしれません。
しかし、文化庁の文化芸術推進基本計画をみると、文化芸術は、子ども・若者や、高齢者、障がい者、在留外国人等にも社会参加の機会をひらく社会包摂※の機能を有しているといわれています。
また、文化芸術基本法では、社会への波及効果として教育、福祉、まちづくり、観光・産業等幅広い分野との関連性にも触れられています。

本特集は、吹田市内で市民が取り組んでいる活動を取材しました。
音楽、ダンス、絵画と表現方法は違いますが、文化芸術がもたらす本質的な価値とは別に、生活の質を高めたり、社会的な基盤づくりにも繋がっている活動です。
その様なことから、大阪市西成区を拠点とし、長年にわたりアートプロジェクトに取り組まれている雨森 信さんにも寄稿いただいています。
文化芸術が「個人のためのもの」から「社会のためのもの」へと広がりをもたらす中で、あらためて文化芸術の社会的価値について考えてみませんか。

※社会包摂とは・・・社会的に弱い立場にある人々をも含め市民一人ひとり、排除や摩擦、孤独や孤立から援護し、社会(地域社会)の一員として取り込み、支え合う考え方のこと。
(吹田市文化政策ビジョンより引用)

音楽で繋がる居場所

1975年に設立した千里バロック合奏団は、30~70代の団員で構成された弦楽器によるアマチュア合奏団です。
定期演奏会の他、地域文化の向上に寄与することを目的として、気軽に演奏を楽しんでもらえる無料コンサートや、地域で活躍する音楽家との共演に取り組んでいます。
役員を務める坂本淳子さんは、「家庭の中では“家族のために”という思いが優先されてしまったり、仕事でも色んなしがらみがあると思うのですが、団では純粋に自分のやりたいことができます。
また、それを一緒に楽しめる仲間がいることで、心の支えにもなっています」と話してくれました。
年齢や演奏技術に関係なく、対等な立場で音楽を楽しみ、成長し合える場になっていることが、50年近く続く団の魅力になっているようです。

障がいがあってもダンスを楽しめる

MASHダンススクールは、発達障がいやダウン症のある青少年を対象にしており、小学生から28歳までが通っています。
代表の安藤真弓さんは、療育(発達支援)センターで子どもたちにダンスを教えていましたが、療育の対象となるのは18歳までとなります。
年齢に関係なくダンスを習える場所がほしいという保護者の声を聞き、2013年に活動を始めました。
障がいがあることによって、他者とのコミュニケーションや自分を表現することが苦手な人もいます。
しかし、障がいの有無に関わらず、身体の動きや顔の表情だけで表現できたり、仲間と一緒に踊ることで、協調性を育めるのがダンスの魅力だと安藤さんは語ります。
また、療育的な側面がある一方で、障がいがあっても純粋にダンスを楽しめる場として、活動を続けていきたいとのことでした。

まちを元気にするトンネルアート

現代美術を愉しもう塾では、市内の高速道路や線路下のトンネルをキャンパスにして、壁画を作成しています。
壁面を彩るのは、参加する子どもたちが思い描く「夢」をテーマにした作品です。
プロのアーティストがサポートしながら、夏休みに10日間かけて完成させます。
活動を開始して17年が経ちますが、過去に参加していた子どもたちの中には、美術学校を卒業し、ボランティアとして参加してくれることもあるそうです。
代表の蓬田理恵子さんは、美術館で名画を鑑賞するのも良いが、自分の感性や思いを身近な生活空間の中で表現できるのが活動の醍醐味だと語ります。
また、殺風景なトンネルが明るくなることで、ポイ捨てや落書きが減り、地域の環境改善にも貢献していることから、企業や行政、自治会などと連携しながら取り組まれているのも、この活動の特徴となっています。

個性が尊重される豊かな社会を創造する

雨森 信(あめのもり のぶ)さん

Breaker Project
ディレクター インディペンデント・キュレーター
2003年より始動した大阪市文化事業「Breaker Project」では、西成区を拠点に地域密着型のアートプロジェクトに継続して取り組む。

芸術とかアートって、あんまり興味ないとか、暮らしの中でなくても全く支障がないとか…、普段、接する機会のない人にとっては、自分とは関係のないものと認識されている方も多いのではないかと思います。

特に私が活動している分野は、現代美術と言われる領域で、「よく分からない」、「難しい」、「見たこともない」という声をよく耳にします。
私自身も、現代美術に出会ったのは、芸術大学に入学してからのことでしたが、人生観を180度変えることになりました。
既成の概念に対する批評的な視点を得て、それまで何となく従ってきた社会の常識から解放され、生きにくい世の中に無理に合わせるのではなく、自分の生き方は自分自身で開拓/創造していけばいいのだと考えるようになっていったのです。

この経験がベースとなって、芸術と社会をつなぐ仕事を志すようになるわけですが、私が立てた仮説は、経済効率ばかりが偏重され、社会が均一化していく中、もっと多くの人が現代のアートに接する機会があれば、私たち一人ひとりが創造性を取り戻し、個性が尊重される豊かな社会へと変わっていくのではないかというものです。

私自身が2003年から携わっている大阪市の文化事業「BreakerProject」は、独自の表現手段を開拓するアーティストと共に、まち(地域)の中に創造の現場を生み出し、様々な関わりをつくりながら、地域密着型のアートプロジェクトに継続して取り組んでいます。
活動していくなかで、教育機関、福祉施設、商店街や地域の人々の協力や連携は必須となるのですが、例えば、高齢者のデイケアセンターでは、美術家の作品制作に継続的に関わってもらうことで、利用者さんたちは「人の役に立てている」という実感を持てたり、作業に参加することが「生きがい」となったり。
職員さんにとっても個々の利用者さんの新たな一面を発見するなど、福祉という範囲では実現しなかった効果が生み出されることがあります。

児童館で行った即興音楽のワークショップでは、障がいのある子どもも参加していて、「普段は人と“違う”ことで周りから受け入れられないことがあるが、この場では“違い”がほとんどわからなかった。
本来は違ってあたりまえということが、表現の場において実現していて、芸術には多様な人を包摂する力があると感じた」という感想を指導員の方からお聞きできたこともありました。

BreakerProjectは教育や福祉を目的とした事業ではないのですが、芸術文化の振興という範囲を超えて副次的な効果が生まれている、ということが実践から明らかになってきています。
こういった研究も増えてきていますし、20年ほど同じ地域で活動してきて手応えも感じる一方で、まだまだ地域や社会の課題は山積しています。
もちろんアートが問題を解決できるような便利な道具ではありませんが、数値化できないような小さな変化を日々積み重ねることで、何かを変えるきっかけをつくることはできるのではないか。
それが未来を創造していくことにつながっていくのではないかと。もしかしたら100年くらい先のことかもしれませんが、そういったことを実感してもらえる現場をつくっていくことが、これからも必要だと考えています。

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THEピックアップ
ラコルタの取り組みを紹介!

すいたソーシャルビジネス支援ネットワーク主催
事業計画策定講座

開催日:10月13日(金)

ラコルタでは、大阪府行政書士会三島支部、日本政策金融公庫吹田支店とともに、ソーシャルビジネス支援ネットワークを組んでいます。
今回の講座では、日本政策金融公庫が発行している「ビジネスプラン見える化BOOK」を活用し、社会を変えたいという想い(組織使命)の整理方法について学びました。
すでに事業に取り組んでいる方から、創業を検討されている方など、18名の方が参加され、ご自身の事業構想を明確にする機会となりました。

写真:講座終了後は個別相談会も実施

テーマカフェ
マイクロアグレッション

開催日:11月7日(火)

特定非営利活動法人とんだばやし国際交流協会の北川知子さんをゲストにお招きし、テーマについてお話いただきました。
マイクロアグレッションとは、そこに偏見や思い込みが知らず知らず埋め込まれているせいで、相手を傷つけてしまう言動のことです。
当日は、「差別がある社会で生きている」ということを念頭に置いた上で、言動に隠されている思い込みや決めつけについて、参加者同士で交流しながら学び合う機会となりました。
写真:多文化共生の観点からお話を聞きました!

ソーシャルな“居場所”をつくろう!
第8期eNカレッジすいた

開催日:9月15日(金)~11月11日(土)

第8期は、「居場所づくり」に特化したカリキュラムを実施しました。
居場所が求められる社会的背景や事例などを学びながら、最後は参加者一人ひとりが居場所プランを発表し合いました。
多世代が気軽に集える場、作業を通じた交流の場、外国にルーツのある人や子ども、ケアラー向けの場など多様なプランが出来上がりました。
講座での学びや出会いを活かし、居場所づくりを通して、吹田のまちを一緒に盛り上げていただければと思います。

写真:20~80代まで23名の参加がありました!

編集ノート

最近「4年振り…」という言葉をよく耳にします。
コロナ前の生活が戻りつつあるようです。
一方で、コロナ以前に戻らないものもあります。
この3年間で、人と人の関り方が大きく変わりしました。
ニュースレターの編集に加わったのも3年前でした。
人との「直接の出会い」の大切さを改めて実感した3年です。
(山本)

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